構造生物 Vol.1 No.1 1995年9月発行

挨拶

TARAプロジェクトに期待する

木原元央(高エネルギー物理学研究所・放射光実験施設長)


 ご紹介を頂きました高エネルギー物理学研究所の木原でございます。この度筑波大学と高エネルギー物理学研究所の間で共同研究という形で蛋白質構造解析の新しい実験ステーションを放射光実験施設の中に整備するという計画が進むことになりました。これは私共といたしましても大変喜ばしいことであると思っております。

 今回の共同研究の意義としては、私は二つあると思っております。まず第一には、このプロジュクトのテーマが蛋白質の構造解析であるということであります。すでに皆様ご承知のように、放射光実験施設の蛋白質の構造解析のユーザーの数は、ここ数年一本調子で増大しております。これは学間の重要性によることは当然でございますが同時に、坂部教授が長年開発研究なさい、ました巨大分子用のワイセンベルグカメラ、いわゆる坂部カメラが、世界的にも非常に高い性能を誇っているということに拠っております。放射光実験施設としては今後ともこの分野を重点的に整備すべきであると思っております。その意味で、今回、筑波大学と共同で新しい整備ができるということは私共にとりましても、非常に意義のあることであると思っております。もう一つの意義は、筑波大学との間にこのような形で共同研究をすすめることが出来るようになったということでございます。私自身かねてから筑波大学との間に、より密接な研究上の連携が出来ることが我々にとりましても非常に重要であると思っておりました。これはもちろんお互いに地理的に非常に近いということもございます。しかし、放射光が幅の広い分野の科学をサポートしているということを考えましたときに、大学の中には生命科学から物質科学その他、非常に優秀な第一級の科学者がいらっしゃいまして、そういう方々と私共の施設とがこれまで以上に密接な関係を保てれば、これは私共にとってもまた大学にとっても非常に有意義なことであると思っています。

 今回の共同研究が契機になりまして今後色々な分野で協力関係が進むことになれば大変有り難いことだと恩っています。最後に、今日をスタートとしていよいよ建設が始まるわけでありますが、私共はご承知のように大学共同利用機関でございます。大学等の研究者の研究をサポートすることが責務でございますので、このプロジェクトが今後大きく育ちますように私共可能な限りの支援をいたしたいと思っております。同時に最後に少しつけ加えさせていただきますと、こういうものが大学の中でも大きなグループとして育って行かれることが私共の願いでもあります。大学当局におかれましても強力なご支援を頂きまして、このプロジェクトを大きく育成していただければ大変ありがたいと恩っております。ご挨拶に替えましてよろしくお願いを申し上げます。