構造生物 Vol.1 No.1 1995年9月発行

編集後記 

構造生物」創刊号の発行にあたって

山之内製薬(株)・創薬研究本部

編集委員長・栗原宏之


昨年8月に、筑波大の坂部先生によりTARAプロジェクトに関する説明会が行われ、そこで産官学が一体となって放射光施設に実験ステーションを建設するという構想が披露されました。ちょうどその頃、米国のAPS(Advanced Photon Source)に医薬品企業13社が共同でビームラインを設置するという計画を耳にしていましたし、このままでは欧米の医薬品企業との差はさらに広がる、と危機感を抱いていた私にとっては、この構想は非常に魅力的でありました。会社の中には採算や機密保持の点を懸念する声もありましたが、このプロジェクトに参加して得られるものは、それらを補って余りあるものだと確信しています。これからの蛋白質結晶学は放射光抜きには考えられませんし、また、プロジェクトを通じて国内外の優秀な研究者とのコミュニケーションを深められるということは、特に私のような企業の研究者にとっては非常に有益であると考えています。

幸いにして、この構想に賛同する企業が集まり、TARAの坂部プロジェクトが発足するに至りました。この機関誌「構造性物」は、TARAビームラインに関する情報を提供することは勿論ですが、それに留まらずに研究者間のちょっとした情報交換にも役立つことができればと思います。皆様の御協力をお願い申し上げます。

 最後になってしまいましたが、このプロジェクト発足のために強力なリーダーシップを発揮され、御多忙の中、煩雑な事務、連絡等まで行って下さった坂部先生に、この場を借りて、心より御礼申し上げます。