構造生物 Vol.1 No.1 1995年9月発行

挨拶

素晴らしい成果は新しい道から

村上 和雄(TARAセンター長)


 TARAセンターの村上です。先程の学長の飛び入りの挨拶と古賀副学長の挨拶とが有りまして私の言いたいことが、ほとんど言い尽くされましたが一言ご挨拶させて頂きます。

 TARAセンターは、なぜ筑波大学に一番適しているのかとよく聞かれ、私は幾つかの特徴を挙げております。一つは、筑波大学長は江崎玲於奈という大変ユニークな学長だということです。江崎先生は国立大学で教官としての経験が全くなくて、民間の企業に30年以上も、それも外国のIBMという会社におられました。二つめは、申すまでもなく筑波研究学園都市というこれまた、ユニークな都市に私共が居るという事。それから三つめは、私共の大学は他の大学と違い、講座制とか学部制を無くしておりまして、大学としては、システムとしてフレキシブルなシステムを持っているということです。従って、こういう新しいプロジェクトに取り組む為には、国立大学のなかでは最も取り組みやすい条件にあるのではないかと思っております。これを私共では、TARAセンターの三点セットと言っております。

 また、国立大学は戦後50年目を迎えて今、一つの大きな曲がり角に来ております。大学の教師は、国家公務員の中でも教育公務員特例法によって身分があつく守られておりまして、少々怠けても首にはならない、あるいは自分の地位が脅かされる事はないという、大変恵まれた環境にいる訳であります。この大変恵まれているということは、ややもすれば私共は停滞をし、世間から或いは世界の学間の分野から、閉じこもる事もできる。そういうことでは、これからの日本の学術の中心を担う大学は、このままではダメな面があると思っております。

 従ってこのTARAセンターでは、例えば、厳しい競争原理を導入するとか、外部評価を入れるとか、年限を切るとかという事を考えております。欧米の大学では、これらは恐らく当たり前の事ではないかと思いますが、国立大学でこれを本当にやるのは、革命的な事でありまして、大変困難な面もあるかと思います。しかし、私共はこの構想を是非すすめて、ただ単に筑波大学のためだけではなくて、少し口幅ったい言い方ですが、日本の大学改革の先兵になろうという心づもりでこのセンター一を運営しております。そのためにも、企業や国立研究機関の方々に、TARAセンターの正式の研究員になって、私共の大学を大いに活用して素晴らしい成果をあげて頂きたいと思っております。ただ私共は世間知らずのところがありまして、色々不行き届きの点が多々あると思いますが、是非皆様方のご協力を得て、特にこのプロジェクトを盛り上げて行きたいと思っております。

 最後になりましたが、このプロジェクト発足にあたりまして、高エネルギー物理学研究所の木原先生、三共の畠様を始め多くの企業の方々に、非常に応援して頂きました事に厚く御礼申し上げます。やっとスタートしたところで’ありますが、是非皆様のご協力を得て、できれば日本の或いは世界の構造生物学の中心になるという希望を持って、このプロジェクトをすすめて頂きたいと思います。TARAセンターとしても、最も期待しているプロジェクトの一つであり、私共はできる限りこのプロジェクトを応援したいと思っております。是非皆さんと一緒に、このプロジェクトを盛り上げていきたいと念願しておりますので、何卒よろしく御願い申し上げます。