構造生物 Vol.1 No.1 1995年9月発行

巻頭言

創刊にあたって

坂部 知平(筑波大学・応用生物化学系教授プロジェクト代表者)


 この度産官学が一体となって先端的且つ学際的な研究を行うため筑波大学に先端学際領域研究センター、英語名Tsukuba Advanced Research A11iance(TARA)が昨年創設され、本年TARAの生命機能制御研究アスペクトに於いて「放射光X線による生命機能維持物質の結晶構造解析と利用基盤に関する研究」と題するプロジェクトが4月24日付けで認められました。このプロジェクトの発足にあたっては、三共(株)の畠忠博士をはじめ多くの企業の方々、放射光実験施設長の木原元央教授をはじめ高エネルギー物理学研究所の方々、それからTARAセンター長村上和雄教授はじめ筑波大学の方々から一方ならぬ御協力を賜りました。心から感謝いたします。ヨーロッパの放射光施設DESYやESRFには分子生物学研究のためにEMBLが夫々の敷地内に存在し、米国の放射光施設CHESSにはCorne11大学、SRCにはWisconsin大学、SSRLにはStanford大学と言う風に夫々の放射光施設に大学が隣接し極めて緊密な関係にあって大きな成果を上げています。筑波大学は、現在放射光X線が利用できる我が国唯一の放射光実験施設(PF)、に隣接し放射光を利用する科学を進めるのに極めて有利な条件にあります。本プロジェクトは此の有利さを生かし、産官学が一体となってPFにTARA用の実験ステーションを建設し、蛋白質の結晶構造解析を行い、それに基づく学際的な研究を行う事を目的としています。そしてこのプロジェクトが母体となってTARAの名にふさわしくNMR、小角散乱、電子顕微鏡等構造に関する分野や遺伝子工学、理論分野の方々の協力を得て将来世界的レベルの構造生物学の中心として発展することを夢見ています。その意味で此の雑誌は、単に本プロジェクト班員内配布に止まらず、関心のある方々に広く読んで頂けるものにしたいと思っています。