構造生物 Vol.1 No.1 1995年9月発行

資料9

平成7年4月24日

 

応用生物化学系

坂部知平殿

 

先端学際領域研究センター長

村上和雄

 

平成7年度TARAブロジェクト審査結果について(通知)

 

 このことについて、先日行われました審査会において検討の結果、採択となりましたので通知します。

 なお、審査会からのコメントを別紙のとおり添付しますので、参考にしていただきたいと思います。

 おって、研究開始日等については後日あらためて通知しますことを申し添えます。

 

 

「放射光X線による生命機能維持物質の結晶構造解析と利用基盤に関する研究」

 

○高分子の立体構造解析は構造生物学の名のもと、近年、情報が増加、この中にあって坂部カメラを持つ技術優位性高い、企業としては、構造解析に基づく、de novo drug designに興味を持っているが、現状ではそれ程有用性高くなく、従い、社会的インパクトもまだ低い。スピードが勝負の一面(構造解析にかかる時間が待てない)。

 

○共同研究ブロジェクトの典型的な例であり、成果がでればその社会的インパクトは大きいと思われる。企業サイドから見ればこの成果の応用として、有用酵素、レセプター等のプロトタイブとなる化合物が理論的に創出されればその貢献度は大である。この点からも学際性、創造性に富む研究テーマである。又、生体の酵素などの反応のメカニズムが詳細に研究解明されれば、生体の代謝機構の流れや方向性も分かり、動的ホメオスタシスの理解も大いに進むと思われる。放射光X線装置のオリジナリティは高いと思う。

 

○総合的に見てTARAのプロジェクトとして最もふさわしいものと判断する、(ブロジェクトの内容、スケール、実行可能性、協力体制、実績etc.)

 

○三次元構造の精度な解析技術の開発と各種活性物質の構造は、筑波大学にとどまらず、周辺機関の研究レベルを大きく向上させ、インパクトが大である。実際に構造生物学の一つとなる可能性があり、今回がラストチャンスならば、TARAとして支援することに意義が深い。

 

○独創性の高いX線解析技術での構造解析法、産官学との協同体制、資金の確保見通しなど、いずれもTARAプロジェクトとして採用するにふさわしいものと考えられる。

 

○筑波にこのような解析センターができることは素晴らしいことと思います。生化学的な研究はそれぞれの専門家が行うので、TARAは構造解析をする拠点になるのでしょうが基盤的な研究を進める上で重要なことと考えます。

 

○構造生物学の基盤をつくるという点でブロジェクトの意義そのものは疑いないと考えられるが。3年間にどこに焦点をあてていくかについては今後の問題と考えられる。このブロジェクト自身で1センターが出来るスケールをもっているとも考えられ、運営委での判断が要求される部分が大きいと考えられる。筑波の地の利を生かすという点では極めて特徴的なものになりうると思われる。

 

○坂部先生が在籍中は良いと思いますが、せっかく坂部先生が開発されたものをどう継続させるかが問題、TARAセンター研究員だけで可能とは思えない。ブロジェクトとしてはおもしろい。少し大きすぎるか?

 

○装置開発を主体とし、その利用を総合的に進めるための非常に大きなグループ研究で内容は大変立派である、ただ、あまりに大きなグループであり、そのための居室や実験スペースを十分に確保できるかどうか、及び、実験の本体が高エネ研で行われるため、そちらでのスペースの確保等に留意する必要があろう。また、機械の購入と維持等において非常に大きな予算を必要としており、一応企業等から寄付が予定されているが、集まらなかった場合の対応の仕方を検討しておくことも必要であろう。本研究では、強いリーダーシッブが必要であり、2年後研究代表者が停年になった後のとりまとめの方法が不明であり、その点はやはり大きな間題として残される。

 

○構造生物学の手法としてのX線結晶解析は育力であることは言うまでもないとは思うのだが・・TARAの現在募集するブロジェクトではなく(いわゆるTARAプロになじまない)、別のリエゾン推進室プロジェクトのような型の方が良いと思う。