構造生物 Vol.1 No.1 1995年9月発行

第1回講演会並びに総会報告

 


 TARA蛋白結晶解析プロジェクトの第1回講演会並びに総会が平成7年5月8日に筑波大学・大学会館特別会議室で表1に従って開催された。

講演会に先立ち、筑波大学江崎玲於奈学長が祝辞を下された。江崎学長は当日他にご用があり、プログラム作成時点では諦めていたが、前日になってお時間を頂けることが分かり、記念すべき初回に江崎学長の祝辞を頂けたことは誠に喜ばしい限りである。この時の祝辞を創刊号の最初に掲載させて頂いた。

 

表1 TARA蛋白結晶解析プロジェクト第1回講演会並びに総会プログラム

平成7年5月12日

祝辞;筑波大学江崎玲於奈 学長

 

T.講演会

 場所;筑波大学大学会館特別会議室

 時間;13:30−14:30

 講師;Dr.Joseph Gilboa(ワイズマン研究所構章生物学部門)

演題1)Structural studies on bacterioferritin,the cytochrome b1 of

Escherichia coli

   2)Doug1as Instrument Protein Crysta11ization;IMPAX1−5

U.記念撮影

 時間;14:45−14:55

V.総会

 場所;筑波大学大学会館特別会議室

 時間;15:OO−17:OO

 挨拶;筑波大学研究担当副学長 古賀達蔵 教授

    筑波大学TARAセンター長 村上和雄 教授

    放射光実験施設長 木原元央 教授 

 報告;年間の歩み................................資料1〜4

    募金中間報告...............................資料5

    カメラ等基本設備仕様の進展状況...資料6

 議題;今後の本プロジェクトの進め方..........資料8

    基本設備の整備.......................資料4

    ジャーナルの発行...................資料7

    講習会の進め方.......................資料8

    支援体制の確立等_(研究員雇用等)

 

予算案............................................資料9

委員選出..........................................資料10

W.懇親会

 時間;17:00−18:30

 場所;筑波大学大学会館レストランプラザ

    

 

T.講演会

引き続きワイズマン研究所構造生物学部門のDr.J,Gi1boaが1時間の講演をされた。彼の経歴と講演要旨を表2に示す。J.Gi1boaは放射光実験施設(PF)の共同利用者で、今回は日本学術振興会の招きにより共同利用実験と講演旅行のため3週間の予定で来日された。

 

表2

1. Introducing myself. . .

 I was born in the U.S. in the city of New York where I studied Chemistry at Columbia University. I moved to Davis, California with my young wife and studied Food Science at the Davis Campus of the University of California(M.S.). My Ph.D. was in Physical Chemistry, also at Davis. I was awarded a fellowship of the National Institute of Health to do research at the Weizmann Institute of Science in Israel. After two years as a visiting scientist at the department of Biophysics,

I decided together with my wife to stay permanently in Israel, where we have lived ever since. My interest in Protein crystallography began when I succeeded in

crystallizing the plant heamagglutinin,concanavalin A.This forced me to travel to the MRC in Cambrige where Max Perutz encouraged me to continue this work. More recently, the discovery of bacterioferritin by my colleague,Dr.Joseph Yariv, Ied me to crystallographic studies of this giant protein. My colleague,Dr.Felix Frolow,and I have spent two very fruitful visits at the Photon Factory collecting high resolution data with Professor Sakabe's Macromolecular Weissenberg camera. My lecture today will describe these studies.

 

2.Today's lecture is on "Structural studies on bacterioferritin, the cytochrome b1 of Escherichia coli" Bacterioferritin was first isolated in crystalline form from bacteria by Yariv and co-workers at the Weizlnann Institute of Science in 1979. Later, it was shown to be identical in all respects to the cytochrome b, of E.coli, originally characterized by Keilin in 1934. We have been studying the structure of this protein in two crystal form: a tetragonal crystal of space group P42121that diffracts to 1.5A and a monoclinic crystal of space group P242121will

discuss the important features of this structure as revealed at the current

resolution of our data-2.5A-as well as our experiences at the Photon Factory in using the Macromolecular Weissenberg cameras to collect high resolution data from the tetragonal crystal, whose large cell dilnensions (210Ax210Axl45A) present a serious technical challenge even for this ideal data collection system.

 

U.記念撮影

休憩時間を利用し大学会館講堂前のロビーで記念写真を撮影した(写真1)。此の記念写真には丁度70名写っている。大変多くの方々の参加があり、これは此のプロジェクトに対する期待の大きさの現れだと思う。実はもう一人PFの渡辺信久氏が出席していたが、丁度この時PFの共同利用者に呼び出され、残念な事に記念撮影に参加できなかった。

V.総会

1)挨拶

 総会は筑波大学・研究担当副学長・古賀達蔵教授の挨拶を皮切りに、TARAセンター長・村上和雄教授、高エネルギー物理学研究所・放射光実験施設長・木原元央教授の挨拶があった。この時の挨拶をテープから起こし、本誌に掲載させて頂いた。

2)報告

 議事進行は三共(株)の畠忠氏が行い、報告及び議案の説明等は本プロジェクトの代表者である坂部知平氏が行った。

1)1年間の歩み

 本プロジェクトが発足する迄の約1年間、即ち昨年4月27日に行われたTARAセンターの説明会より今日に至る経過が資料2,4,5に基づいて報告された。詳しくは前の章で述べたので此処では省略する。本プロジェクトの申請書(資料8)に基づいて研究目的、研究手段、更に将来、構造生物学研究センターに発展したいと云う希望が述べられた。本プロジェクトは9サブプロジェクトから構成され(表4)、第一サブプロジェクトがPFに実験ステーションを建設し、第二サブプロジェクトはTARAセンターを整備する。そして残りのサブプロジェクトは上記の手段を活用して有機的に研究を行う、また各自およそ3,4のサブプロジェクトに属していることなどが説明された。本プロジェクトには現在86名が参加し、参加者名簿は資料8に記載されているが、参加団体毎の人数にまとめたものを表5に示す。

 

表3 本プロジェクトの目的、手段、展望

 

研究題目;放射光x線による生命機能維持物質の結晶構造解析と利用基盤に関する研究

 

研究目的;蛋白質など生命維持に重要な物質の結晶構造を墓に基礎科学の発展に寄与

     すると共に農学、医学、工学への利用研究を行う

 

研究手段;産官学が協力し放射光実験施設BL6Bに専用の実験ステーションを建設し

TARAセンターに構造生物学に必要な電子計算機を初め各種の機器を設置する

 

近い将来;マルチポールウイグラーラインを我々も使用出来るよう、BL5に蛋白結晶用

ビームライン及び実験ステーションの建設を行う

 

将  来; X線結晶解析のみでなく、NMR、溶液散乱等、構造に関する分野、及び構造

に基づく研究を行う分野と広く協力しあって構造生物学研究センターに発

展させたい

 

 

           表4 サブブロジェクト

1.TARA用実験ステーション建設及びそこに設置する各種装置の開発

2.解析用機器の導入及びソフトの整傭

3.インシュリンなど蛋白質結晶の超精密解析

4.膜蛋白質、特に生体エネルギー変換機構に関する研究

5.ウイルスなど超巨大分子の研究及びその応用

6.酵素の構造解析及びそれに基づく機能、物性及び反応機構に関する研究

7.時分割ラウエ法による蛋白質分子の動的構造解析

8.核酸関連蛋白質の結晶構造解析と機能の研究及びその応用

9.医学的に重要な蛋白質の研究とその応用

 

2)募金中間報告資料10により募金の中間報告が行われた。予備登録というのは、研究者本人がTARAに参加したいと云う希望を書いたもので、寄付が出来るように努力する必要はあるが、寄付が出来なかったとしても仕方が無いというものである。これでTARAの客員研究員にはなれるが、ビームタイムの配分は受けられない。それに対し、建設参加申込書は機関の長など予算権限者により提出されるもので、寄付することが前提である。従って、これを提出した企業はTARAとしてのビームタイム使用権ができる。平成8年5月以降は、2週間前までに申し込めば自由に使用出来るようにしたいと思っているが、しかしこれらのことは後日委員会で決定しそれに従って運営されることになる。寄附金申込書が提出されると、寄付請求書が発行され、寄付して頂くことになる。当然の事ながら総て免税扱いである。

表5 本プロジェクト参加団体及び人数

大学

人数

研究所等

人数

企業

人数

筑波大

名大

阪大

北大

東大

東工大

長岡技大

お茶の水大

京大

大阪府大

姫路工大

徳島大

0xford大

7名

PF

理研

FAIS

MaxP1ank

3名

○蛋工研

○山之内

○日本タバコ

三菱化学

○工一ザイ

○キリンビ一ル

○三共

○万有

藤沢

第一製薬

協和発酵

塩野義

武田

日本ロツシュ

理学電気

8名

4研究所等 9名

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13大学 28名

 

16企業    49名

総計33 団体、86名

○印は寄付決定企業、その他の企業はTARAとしてビームタイムの配分を受けることはできない。

3)カメラ等基本設備仕様の進展状況

資料7「アンケートの集計結果」に基づきカメラ等の基本設備の説明が行われた。基本方針として精度を落とさず、出来るだけ使い易いものにするため、カメラ半径は固定で573mmとし、波長範囲はO.9〜1.8Aにする。これにより、分解能1.3Aまで測定可能で、格子定数も300A迄は楽に測定できる。既にカメラの仕様は完成していること、来春5月オープンに向けて順調に進められていること等が報告された。

 

3)議事

 1)基本設傭の整備

 資料8に基づき、TARAプロジェクトはTARAビームラインを建設することだけが目的ではなく、資料8に掲げた各種機器やソフトウエアーをTARAセンターに整備し、上記した研究を行う必要があることが説明され、その基本方針が承認された。

2)ジャーナルの発行

 資料11に基づきジャーナル発行の基本姿勢が説明され原案どうり承認された。今年度は建設等で、特に筑波大及びPFが忙しいので、発行回数などは無理のない程度とし、徐々に定期発行物にすることが了承された。

3)講演会及び講習会の進め方

 多くの企業から講演会及び講習会などの開催要求があった(資料7)。これを進めるため資料12に基づいた説明があり、更に畠忠氏より補足説明が成された。実行に当たってはより詳しい案を委員会において検討することになった。

4)支援体制の確立(研究員雇用等)

 現在本プロジェクトは86人により構成されているが、今後増加の一途を辿ると思われる。そして此の巨大プロジェクトが成功するか否かは構成員が効率よくTARA及びPFの施設を共同利用出来るか否かに大きく掛かっている。その為には共同利用を支え、発展させるための人材が不可欠である。人材は常に探していないと欲しい時にすぐ見付かると言うものではない。従ってビームラインアシスタントや研究員の雇用等を行えるようにする事について説明があり、了承された。

5)予算案

 平成7年度の予算案(資料13)が提出され了承された。

6)委員選出

 各サブプロジェクトの代表者(班長)をサブプロジェクトの名簿(資料14)から選出した。又人数の多いサブプロジェクトには副代表者(副班長)を選出した。班長及び副班長はプロジェクト代表者と協力し合って、各々のサブプロジェクトが効率よく成果を上げるよう、研究会、その他必要事項を行う。

 委員会はプロジェクト代表者、班長、副班長及び現段階で建設参加申込書が提出されている7企業(各企業1名で班長又は副班長を兼任することもある)で構成されることが決定された。平成7年度の委員を表6に示す。

 当面、此の委員会が必要に応じて開催され、本プロジェクト全体に関する事、即ち本プロジェクトの運営、ジャーナルの発行、講習会、その他必要事項の決定並びに実行を行う。

 

表6 平成7年度委員名簿(17名)

プロジェクト代表 坂部知平(筑波大)

サププロジェクト

番号

班長名(所属)

副班長名(所属)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

渡辺信久(PF)

東常行(理学電機)

坂部貴和子(名大、FAIS)

三木邦夫(京大)

月原冨武(蛋白研) 

祥雲弘文(筑波大)

野中孝昌(長岡技科大)

田仲可昌(筑波大)

佐藤能雅(東大)

 

 

 

 

 

宮野雅司(JT)

 

 

加藤洋一(キリンビール(株))

企業の委員畠忠(三共(株)企業代表

池森恵(エーザイ(株))

加藤洋一(キリンビール(株)

栗原宏之(山之内製薬(株)

三浦圭子(萬有製薬(株)

宮野雅司(JT)

森川取右(蛋工研)

 

W.懇親会

 懇親を促進するよう名札にサブプロジェクト番号を明記し互いの専門或いは興味などについて、交流しやすいようにした。乾杯の音頭は南目康夫教授に御願いした。

 懇親会にはTARA建設関係者、日頃お世話になる事務関係者等多数の方々をご招待し総勢82名が参加した。

 

 本総会の参加者名簿を資料15に示す。