構造生物 Vol.2 No1
1996年4月発行

「データ収集とプロセスにおける注意点」感想記


鎌田健司

萬有製薬

「データ収集とプロセスにおける注意点」というテーマで中川敦史氏より話題提供が なされた。まずPFの蛋白質構造解析用ビームラインの特徴についての説明の後、それ ぞれについての注意点が話された。この講演の中で最も強調されていたのは、実験者が 「PFを使って何を目的としたデータ収集を行うか」を良く考えておかなければいけな いということであった。それぞれの研究者の目的は異なっており、ベストのデータも人 によって違ってくる。目的が決まればおのずと何を優先するかが明確になり、何に注意 して測定条件が決定するかが分かるのである。また目的がはっきりして初めて、PFの優 秀なスタッフの方々の助言が生きてくるのであろう。これは非常に当たり前のことでは あるが、自分がいままで漫然と「そこそこのデータ収集」をしていなかったか、おおい に反省させられた。またディスカッションの中では、データ収集後の解析ソフト(local scaling etc.)についても議論がなされた。東氏(リガク)が発言なさ?ていたように、ハ ード、ソフトを問わず総合的な努力をすることによって初めて、構造解析可能な結晶の 数を増やしていくことが可能なのであろう。

TARAプロジェクトの範疇に捕われずに考えると、今年の5月にはPF内に蛋白質構造 解析用ビームラインが3本できることになる。またSpring-8の蛋白質構造解析用ビーム ラインが完成すれば、さらに選択肢が増えていくことになる。これからの構造生物学者 には、これらのビームラインの個性を十分理解して、この多彩で強力な武器を使いこな していくことが要求されるのであろう。


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