構造生物 Vol.2 No1
1996年4月発行

ソフトウェア検討会議報告


三浦圭子

萬有製薬(株)つくば研究所

内容:ソフトウェア検討会議報告

期日:1996年3月12日一3月13日
場所:筑波大学共同研究棟Aおよび本部棟会議室
出席者:3月12日
坂部知平(筑波大)、坂部貴和子(FAIS)、酒井宏明(筑波大)、中川 敦史(北大)、竹中章郎(東工大)、鈴木津巨(名大)、池水(筑波大) 畠忠(三共)、宮野雅司(JT)、川上善之(工一サイ)、三浦圭子 (萬有)
出席者:3月13日
坂部知平(筑波大)、坂部貴和子(FAIS)、酒井宏明(筑波大)、中川 敦史(北大)、鈴木津巨(名大)、池水信二(筑波大) 畠忠(三共)、宮野雅司(JT)、栗原宏之(山之内)、三浦圭子(萬有)、 白鳥康彦(日本ロシュ)、鈴木賊(第一製薬)
議題: 新規購入予定ソフトウェアの検討
QUANTA/X-RAYおよび周辺ソフトウェア(CTCラボラトリー取扱): 3月12日
Xsightおよび周辺ソフトウェア(菱化システム取扱): 3月13日
内容
デモを見ながら各ソフトウェアの機能および動作状況を確認した。
Xsightについては、デモ前に概要説明があった。
デモ終了後、購入理由の妥当性等を協議した。
確認内容
QUANTA/X-RAYの開発元のMSI社とxsightの開発元のBiosym社の合併が 昨年8月に発表されたこともあり'、計画では2年後を目処に両者の分子設計関連ソフトウェアを含めて統合される予定である。Insight970として一つ のものになる予定と説明された。
購入後の保守契約を結ぶことでバージョンアップに対応することになるの で両者が統合したものに置き換えて整備されることとなる。
今までの開発の経過を踏まえた形で、QUANTA/X-RAYはCHARMmや X-PLORを用いるのに便利なように工夫されていることと、Xsightは重原 子同型置換法による構造決定を便利に行なえるように整備されているという 特徴があり、現在は完全に同様のものとはいえない。
これら2種類について、以下に詳細に記す。
QUANTA/X-RAYは、
Xsightと比較すると回折データ処理、MIRおよびPROLSQ等の位相決定 から構造精密化の部分が含まれていない。ただし、開発元で扱っている X-PLORとの相互利用の為のファイル変換に対応がうまくできている。
(インターフェイスの整備と説明されていた)
分子置換法は、X-PLORのものを利用しやすい形に整備されていたが、 回転関数、並進関数の解の一番高いものから順にモデル表示で位置確認が するのみで、そのピークを2次元マップで確認するためのグラフ表示は できなかった。
Cαtraceは、2.5Aまでの解析済みのモデルを用いた2Fo-Fc mapをデモに 使用したので、間違いなくsearchできた。実際の初期モデルを置くときに 用いる電子密度はもっとあいまいなものとなるので、その場合にどの程度 適応できるかが問題となるであろうという意見が出ていた。
Cαtraceでフラグメントフィットした後に、フラグメント同志をつなげる ために、アミノ酸配列との一致を検討する検索ができた。
ただし、デモの試行では、最初N末とC末の決定が逆となってalignment 結果が表示された。両末を逆に決定し直すことで修正できたが、間違っ た決定であっても1つしか表示されないことが問題であり、その他の候補に ついても可能1性の程度を含めて検討できるようなリストを随時表示するよう になっていないと難しいと思われた。
阻害剤等低分子のリガンドを電子密度に当てはめて、Real Space Reinement の計算を行なう部分は操作が速やかに行えるように工夫されていた。
(XFIT,XLIGANDという設定である)
ただし、10例程表示されたが、阻害剤が逆に入っている例もあり、どち らが正しいのかはちゃんとマップを見て評価する必要があると思われた。
Xsightは、
位相決定の部分が組み込まれているが、大半はDLMcRee開発のXtalView を基本にしている。
(そのまま組み込んでいるようで、windowのデザインもInsightとは
異なるものがでてくるという違和感があった) 重原子誘導体の評価が,Scaling, Pattersonmap表示,重原子位置捜査を含め 速やかに行なえる。
(操作に慣れると、PFで取ったデータがすぐ傍で評価できて効率良く
実験スケジュールが組み立てられるようになるであろう)
XtalViewには無い分子置換法も使えるように組み込まれている。 構造精密化の部分は、Density Modiication, PROLSQ等も利用できるように 整備されている。
X-PLORとのインターフェイスの整備は、近々X-PLOR version5.Oが出る というのにversion4.3に対応するようにしているという対応の遅さが指摘 されていた。
多数の開発者による解析ソフトウエアの集合体であるので、まだパラメー ター入力部分が統一されておらず、バグも直されていないところがあった。
阻害剤等低分子のリガンドを電子密度に当てはめる操作は、低分子のモデ ルフィットがマニュアルで時間がかかるという印象を強く受けた。
協議内容
初日の3月12日では、既に検討が済んでいるXsightとの比較が十分 されていていないことと、予算的に両方の購入が可能であるかは判断し かねる部分がある。QUANTA/X-RAYと比較してどちらかのみを購入する というのではなく、xsightに追加してQUANTA/X-RAYが購入できるので あれば導入を決定するという方針が討議された。
3月13日にXsightのデモを確認した後には、Xsightの簡便さはあるが リガンドフィット等QUANTA/X-RAYの方が操作性が良かったような印象は 消せなかったこともあり、いずれ片方の導入でも十分ではないと判断された。
基本的には、どの研究部門でも蛋白質結晶構造解析の為に必要とされる ソフトウェアは個々に用意してあり、相互のファイル変換等は準備されて いることではあるが、今回のデモで確認できたような統合形式の便利な 部分も無視できない。
企業における現在までの分子設計関連ソフトウェアの導入状況も関係して くると考慮されるが、今回の検討委員会に出席した企業のうち、MSIの QUANTA/CHARMmを導入しているのが5社(その内野にQUANTA/X-RAY を購入しているところが2社)であり、BiosymのInsightIIを導入していると ころが2社であった。(一部重複あり)
TARAプロジェクトの特徴である企業を含めた多くの研究部門の研究者に. 試用の機会が与えられることは、これらの統合ソフトの今後の他部門への 導入の可能性を含むと考慮される。デモ形式と理解していずれも購入する ことで交渉していきたいという意見がまとめられた。
追記
当方はつくば在住ということもあり、坂部プロジェクトで試験導入した Xsightの試用を行ないながら、マニュアル作製を現在行なっています。 まずはPFで取った重原子誘導体のデータが、すぐに評価することができる ように整備していく予定です。
従来の解析方法では、コマンドを選びInput fi1eを書き換えていたところを windowをたくさん開いて選んで行かなければならない煩雑さはありますが、 慣れると数分以内にデータ評価ができることはとても有効であると感じて いるところです。

次頁にソフトウェアの概要図を添付します。構造解析関連のソフトウェア 統合の概要およびMSIとBiosymの統合構築の違いが参照されるものを選びま した。尚、各回の掲載については、取扱業者のCTCラボラトリーシステムズ 株式会社および(株)菱化システムの許可を得ました。
以上


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sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp