去る1996年3月1日、米国で一つの新薬が承認された。申請してから僅か72日と
いっスピード記録を打ち立てたその薬は、アボット社から出された抗AIDS薬でその創
薬研究にはSBDD(Stmcture-Based Drug Design)が駆使された。同日に同じく承認され
たメルク社の抗AIDS薬もSBDDにより創薬されたものである。
SBDDというラショナルな薬物設計は以下のステップからなるCADD(Compmputer
Aided Drug Design)手法である。
その際、得られた活性物質は受容体との共結晶X線結晶解析により結合を計算予測と比較 して計算精度の向上をはかり、さらに薬物設計を進める。
ところで、構造生物学がSBDDの基礎にあるということを疑う人はいないであろう。 またかつては低分子リガンドをターゲットとしてきた医薬品研究もいまや、受容体や高分 子リガンドをターゲットにする時代となった。つまり、構造生物学による高分子ターゲッ トの構造と機能・反応性解析をぬきに探索研究は成り立たないのである。
エーザイでは筑波、ボストン、ロンドンと世界三極に探索研究所を配備しており、社内 でのグローバルな研究競争が始まっている。我々はTARAという社外研究資源を最大限 活用してSBDDを武器に世界企業とも伍して戦いたいと願っている。