構造生物 Vol.2 No.2
1996年10月発行

BL-6Bの一利用者としての感想


齋藤純一

京都大学・大学院理学研究科

 BL-6BはTARA用ビームラインとして本年5月下旬に公開されてから2ヵ 月ほどの使用期間がありましたが,この期間中の利用者の一人として,その率直 な感想と今後改良していただきたい点をいくつか述べさせていただきます.

 このビームラインは,一種類のカセットでカメラ半径が573mmに固定されて おり,そのカセットには400×800mmのサイズの大型IPを2枚並べて真空 吸着させることが可能です.IPをこのようにセットし,x線の波長を1.00Åとし たときには,垂直方向で1.46Å,水平方向では1.76Åの分解能までの反射が測 定できます.しかも,このカメラ半径の大きさからピークの重なりが少なくなり, これまでのビームラインでは考えられないほど少ない枚数のIPで短時間に高分 解能のデータ収集が可能となりました.実際にBL-6Bで1.8Aの分解能のデータ 測定を行いましたが,その測定時間は,以前同程度のデータ測定をBL-6Aで 286mmのカセット(type 2Å)を使用して行ったときのものと比較すると半分位 でした.また,大型IP読み取り用装置はBAS2000のダイナミックレンジが 4桁であったのに対して5桁になっているため,より高分解能の反射を測定する ために比較的長く露光しても低分解能の反射も飽和せず記録されるように考慮さ れています。しかしながら、記録された大型IPのイメージを読み取るには, 1枚あたり10分ほどかかり,現在設置されている2台の大型IP用読み取り装 置を使用しても,読み取りが測定のスピードに追いつけないという状態でした. また,読み取り中にIPが装置内に詰まったり,正しく読み取れなかったりとい うトラブルが残念ながら何度もありました.まだ,初期の導入の時点でいたしか たないと思いますが,このビームラインの利点を完全に生かしきっていないとい う印象も受けますので,IPの読み取りに要する時間の短縮化と構造上起こるトラ ブルが少なくなるように今後改良して戴きたいと思います.将来,このビームラ インが幅広く有効に利用されることにより,数多くの興味あるタンパク質の立体 構造が解明されることが期待されます.


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