構造生物 Vol.2 No.2
1996年10月発行

TARAステーションBL-6Bを利用した感想


川上善之

エーザイ(株)筑波探索研究所

 TARAステーションBL-6Bを使用した感想を寄せて欲しいと編集者から依頼 があったので利用した感想を少しまとめてみた。我々は96年度上期3回(いずれも 7月)TARAステーションBL-6Bを使用した。目的は、我々がデザインしたリガ ンドと標的タンパクとの結合様式をその共結晶構造解析により調べることである。現 在のテーマでは微小結晶しか得られずPFでの実験なくしては我々の研究は成り立 たないので、おおいにTARAステーションBL-6Bを利用したい。

 6月にオープンしたばかりで7月のはじめに測定がうまくできるか心配であった が、坂部先生をはじめとしたTARA関係者の努力により装置が順調に稼働していた。 しかも以前BL-6Aを使用したことがあるので、すぐにBL-6Bの装置に慣れるこ とが出来て、測定が円滑に進んだ。IP読み取り装置が近くにあるのでBL-6Aに比 べて効率よく測定できるようになった。IPが4倍大きくなって(40x80cm)、 性能も良く読み取り速度も速くなっている。しかし、IPが大きくなった分その取り 扱いに気を使っている。それでも取扱いにくさか、IP読み取り装置のメカにもよる のか、破損するIPが以前に比べて多いような気がする。また、IP一枚当たりのイ メージデータの容量が大きくて、ホストコンピュータヘのデータ転送に時間がかかり すぎて次のグループの測定時間に食い込んでしまった。今度データ転送の問題は解決 されるとのことなので安心している。IPデータ読み取り中に他の動作をするとデー タにノイズが入るなど少々不満もあるが、今後改善されることを希望する。

 実験ステーションで2回目(7月18日)に測定したとき、ステーション内の温度 が低く8℃となっていて、空調機の排水量が異常に多くなっていた。我々はなるべく ハッチを閉めて実験し、排水量に気をつけた。また、次に利用するグループにも口頭 で排水に注意するように伝えた。しかし、充分に趣旨が伝わっていなかったため次の グループは漏水事故を起こしてしまい、測定装置が浸水して運転できなくなった。復 旧に半日を要し貴重な測定時間を無駄にしてしまった。後で知ったことだが、以前に 実験したグループが室温設定を低温に変えて実験したが、連絡の不備で室温が低温の ままになっていた。そのため、空調機が回りっばなしとなり、開いていたハッチから ステーション外の空気が入り込んで除湿され、排水があふれて装置に浸入したものと 思われる。ここで問題なのは2点ある。第一は、室温などの環境設定を変更する場合 上述の事故だけではなく、ビーム路を変化させるなど測定に影響を与えるので、PF スタッフに必ず連絡するなど次に使うグループのための配慮が必要である。二番目に、 我々は排水の異常に気がついていたが次のグループには口頭でしか伝えてなかった。 異常に気がついた時点でPFスタッフに連絡して、点検をしていただかなくてはいけ なかった。共同利用施設を上手に使うために運用に関して簡単な決まりを作ってみた らどうだろうか。

 TARA坂部プロジェクトにより、我々企業研究者の夢であった企業単独によるタ ンパク構造解析が可能となった。TARAステーションBL-6Bは6Aに比べ高性能 であり、その性能を十分発揮させるとともに、よりよいX線回折測定データが得られ るように我々もTARAメンバーとして努力を傾けたい。


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