構造生物 Vol.3 No.2
1997年7月発行

説明会参加報告


三浦圭子

萬有製薬(株)つくば研究所

説明会名:Xsightバージョンアップ説明会

日時: 
1997年4月23日(水) 13:00-17:00
会場: 
TARAプレハブ計算機室(高エネルギー加速器研究機構内)
内容: 
13:00-13:30 Xsight 955 概要説明
13:30-17:00Xsight操作説明、デモ(MADSYS, X-PLOR Interface, X-fit・Model fitting Program, Question and Answer)
担当: (株)菱化システム科学技術計算部 狩野敦
説明およびデモは、来日したMSIの構造生物学分野のサポート担当者が行った。

参加者の所属および氏名

農水省・農業生物資源研究所 藤本瑞
東京大学・薬学研究科 西田元彦・清水洋成
東京大学・生物生産工学研究センター 加藤有介
名古屋大学・大学院工学研究科 白井剛・坂田誠
京都大学・化学研究所 畑安雄
長岡技術科学大学 坂本泰光・丹健太郎
萬有製薬(株) 三浦圭子
味の素(株)中央研究所 柏木立巳
山之内製薬(株) 栗原宏之・片山直子
塩野義製薬(株) 岬真太郎
エーザイ(株) 川上善之・櫻井正博
FAIS 坂部知平・坂部貴和子・官本康弘

当日の説明は、今までのバージョンに追加された部分および改良された部分に重点を置いてなされた。主に次頁以降の3項目についてデモデータ処理を含めて紹介された。

1)NADSYS
2)QUANTA X-COMPLETELY-AUTOFlT
3)Xsightの改良部分

以下に各項毎の要点を報告する。

  1. NADSYSについて
    MADで位相決定を行う為の計算アプリケーションであり、Xsight95.5で 新規に追加された部分である。

    Insight / X-sightのmenu boxに新しく[MAD]の項目が追加されていた。 デモはdnaKのデータを用いて行われた。必要なパラメーターはmenuに従っ て入力するようになっていることはX-sightの他の位相計算と同様に行えるよう に設定されている。

    手順は、以下のように説明された。

    1. それぞれの波長で△f'(FP),△f"(FPP)を入力する。merge,phase calculationする。
    2. FP,FPP精密化してmad_anom.phsを出力する。
    3. atom siteの精密化については、Bfactor,Occupancyを選びながら、 R-factorが収束している状況がグラフでモニター出来るようになっている。

      デモデータを使った位相計算および精密化が行われ、マップ確認まで説明入りでTARA ワークステーションのIndigo2 R4400を用いて約30分程で計算されていた。

      マップの確認の為に電子密度計算するには、従来のMIR phasingの際に用いて いる部分を利用することになる。
      tutona1が用意されているという話であった。

  2. QUANTAのX-CONPLETELY-AUTOFlTのデモンストレーションがあった。 Xsightの中にもモデル構築用のグラフィックス機能はXtalViewを用いるように設定 されているが、同じMSIで扱っているQUANTAの方が機能が強化されていることから、 この部分についてはQUANTAの使用を推奨する意味で紹介があった。

    QUANTA97では、X-AUTOFIT,X-BUILD,X-LIGANDに加えて X-COMPLETELY-AUTOFITが新たに追加される予定である。この機能では、bone mapから2次構造の情報をベクトルとして自動的に検出しCαに変換していくことと、 Cα構築展開を自動的に行うツールが含まれている。

    実際の操作は、以下のように紹介された。

    1. map maskを利用する。
    2. α-helix等を含む13種のパターンを認識して該当するものがあればフィット していく
    3. Auto extending the CA traceを使い、次のCα候補を画面上で確認していく
    4. fit by real space refinement CRSR)で構造を最適化できる 側鎖についてもside chain library,fit side chain by RSRでモデルを構築した後、 マウスを使って画面の一部に表示されるprofile plotでgeometryを確認しながら修正 できる。

      電子密度の低いループ部分については、モデル構築ができた部分を使って画面上で両端を 選択し、モデル候補が40種類程検索されていた。操作性はよいことが紹介された。

      使用例として、約750残基のPenicimn acylaseの解析での有効性が 紹介された。MIR/ de novo buildingでも数カ月でYork大で解析完了したと いう実績が説明された。
      詳細な概要資料は、菱化システムより提供された。

  3. この秋にリリースが予定されているXsight97で便利なっている機能のデモンストレーションがあった。MIRの改良点は以下の通りである。
    1. automatic peak searchの計算はアルゴリズムの改良により速くなった
    2. 3D patterson図が表示されるようになった。 Harker sectionについては、色違いで表示されて,高いピークが 確認し易い。cross-correlationでチェックできるようになっている。

      Xsight95では2DのマップでそれぞれのHarrker sectionについてそれぞれ patterson peakを探していくようになっていたので操作が煩雑であったが、3D図で 直ちに表示および確認できることは、より理解しやすい印象があった。

      分子置換法も計算アルゴリズムの改良により、計算時間が短縮されていた。

      デモデータを用いた解析手順に応じたメニューの紹介がなされた。

    1. search model input
    2. rotaion seearch
    3. translation search
      手順に応じてmenuが用意されていること分子置換の解が3Dmapで確認 しやすいことが紹介された。
    Xplor interfaceについて
    Xsight 95.5ではinterfaceでXplor3.0が使いやすく設定された。
    但し、Xplor 3.851へのinterfaceが付くのはXsight97からになる。
    (提供資料) Release Notes Ligand-Design,Modeler,Promes-3Dand Xsight Release 95.5October 1996(MSI)

    Protein Crystallography Presentation資料(MSI)
    ソフトウエア開発の傾向として、Xsightは位相計算の部分を強化していく方向である ので、今回のようなMAD対応の計算システムが追加されていることや、MmRの重原子位置の 検索を解り易くする工夫等が特徴的である。MADSYS解析用データは放射光を有効に利用 することで収集できることから今後利用者は増えていくものと考慮される。

    グラフィックスを使った構造精密化は、QUANTA/X-rayの方が使いやすいことを強調 されていて、デモンストレーションでも丁寧に解説があった。X線構造解析の必要なステップに応じてアプリケーションを使い分けていくことを考えた方が良いようである。

    以上


    ご意見、ご要望などは下記のアドレスにメールを下さい。
    sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp