日本たばこ産業株式会社医薬総合研究所は大阪府高槻市のたばこ製造工場跡地に 1994年に医薬品開発を日的として新たに開設された。タンパク質結晶構造解析 のグループは、1995年の4月から旧 JT 生命科学研究所(横浜)から移転した。 同じ時期に分子生物、タンパク質生産を行うグループも高槻に統合拡充され、ひと つのグループとなってこの春から生物研究所創薬技術1グループとして再編された。 ここ高槻に、タンパク質の発現系の開発、大量生産を行い、その試料を使って結 晶化、結晶構造解析そして解析結果の利用まで一貫したタンパク質結晶構造解析の 機能が確立した。時間のかかるタンパク質のクローニング、大量生産の確立から始 めるde novo のタンパク質結晶構造解析を合む研究開発テーマにおいて、限られた 研究者と開発期間でいかに有効な構造情報を提供し、実際の創薬開発に寄与できる かが問われている。今後の課題として、リード化合物が存在しないような新奇な創 薬テーマにおいて、これまでSBDDが弱いとされてきたリード化合物の創製への 寄与を劇的に発展しつつあるHigh Through‐put Assay、Combinatorial Chemistryな どと、どう有機的につなげていけるかが今後の重要な課題である。
TARA坂部プロジェクト、SPring‐8 兵庫県微小結晶プロジェクトなどで放射光を 使った回折データ測定が日常的になってきたことは、初期に得られる結晶がしばし ばサイズが小さかったり、結晶格子が大きく in-house の回折系では十分でないこと が多い現実のなかで、特筆すべきことである。今後、放射光利用を前提としたプロ ジェクトが重大な影響を受けてしまわないよう、日本のなかで放射光利用ができな い期間が何カ月もある運転計画とならないようSpring-8 と KEK-PFで調整される ことを期待している。
標的タンパク質の発現系の開発、大量発現精製をして、結晶化、結晶解析を行い、 決定した構造の利用までを担当している。また、合成化合物の構造確認のための単 結晶解析も行っている。実際の研究開発はプロジェクト中心で動いており、JT と 共同研究開発を進めている Agouron Pharmacuetical Inc.など研究所外も合め、研究 所内の創薬、化学合成、計算化学のグループなどとともにプロジェクト毎で進めて いる。