構造生物 Vol.3 No.3
1997年12月発行

日本ロシュ(株)研究所 Biostructure グループ紹介


白鳥康彦

日本ロシュ(株)研究所医薬品合成化学部 Biostructure グループ

南に湘南海岸、東に古都鎌倉と観光にはうってつけの場所に位置する日本ロシュ研究所は、 スイス F.Hoffmann-La Roche 社の第4番目の研究所として1972年に創立された。現在、 全ロシュグループの研究開発の中で、おもに抗真菌剤と抗腫瘍剤の開発およびHigh throughput screeningによるリード化合物の探索の役割を担っている。我々Biostructure グループは創薬に必要なコアテクノロジーの一つとして3年ほど前に医薬品合成化学部に 配置され、構造化学および構造生物学を中心とした最新のテクノロジーを用いて、リード化 合物の最適化あるいは創製のため日々努力している。グループの構成はX線結晶学1名、 bio-NMR1名(スイス中央研究所長期出張中)、計算化学2名であるが、現在若干名を増員 中である。昨年、ターゲットである酵素タンパク質の構造を世界に先駆けて解明し、現在 structure-based drug design (SBDD)による新規薬物の開発にグループ一丸となって邁進 中である。X線結晶構造解析およびタンパク質のNMR解析は他の海外研究所の設備や TARAを利用しているが、近い将来当研究所にも設置される予定である。

Basel(スイス)、Nutley、Palo Alto(アメリカ)、Welwyn(イギリス)にあるロシュ 研究所では早くからSBDDを手掛けており、アンジオテンシン変換酵素阻害剤シラザプリル、 HlVプロテアーゼ阻害剤サキナビアなどをすでに上市している。また基盤技術でも、タンパ ク質の結晶化にDynamic light scattering測定を応用するための共同研究を行なったり、計 算化学/グラフィクスソフトウェアを自社開発して新しい技術の発展に貢献している。これ ら海外研究所との交流は盛んに行なわれており、1990年からロシュグループに加わった Genentech Inc.を合わせ、約2年に1度Biostructure Symposiumなる国際会議を各研究 所持ち回りで開催している。

今後は、それら研究所に追随すべく、rationalなアプローチにコンビナトリアルケミスト リーをおりまぜて新薬の創製に貢献していきたいと考えている。


ご意見、ご要望などは下記のアドレスにメールを下さい。
sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp