構造生物 Vol.3 No.3
1997年12月発行

坂部プロジェクト代表者引き継ぎにあたって


祥雲弘文

筑波大学・応用生物化学系・教授

筑波大学TARAプロジェクトの代表者は学内者に限るという規定により、本年3月 ご退官になられた坂部教授に代わり、この度代表者を引き継がせて戴くこととなりまし た。とは言え、プロジェクトの実質的な代表者が坂部先生であることに変わりはありま せん。微力ながら、しかし一生懸命この代役を勤めさせて戴きます。宜しくご指導のほ ど、お願い申し上げます。

近年、我が国の蛋白質X線結晶構造解析の殆ど全てが坂部先生の設備でなされてきた と伺っております。そのように偉大な先生を3年の短期間とは言えお招きできたことは、 本学にとり大変な幸運でした。坂部プロジェクトはTARAの代表的存在になっており ます。期間途中で代表者の交代が予想されるプロジェクトが採択になったことからも、 TARA執行部の本プロジェクトヘの期待の大きさが分かります。筑波大学が世界に通 用する一流大学であって欲しい、との執行部の想いがTARA創設に結実しました。し かしこのような本学のみの狭い立場から、本プロジェクトが成り立っている訳でないこ とは十分に承知いたしております。多くの班員の方々、特に企業の方々のご参加と絶大 なるご支援を頂いております。そして、我が国で唯一とも言える研究学園都市にあり、 また本学と高エネルギー研究所PFが隣接するという地の利、人の利を生かし、本プロ ジェクトを構造生物学センターに発展させたいという坂部先生の情熱を痛いほど感じて おります。その実現のために何ができるか、皆さんとご一緒に考えたいと思います。

ネイチャー、サイエンスなど世界の一流誌に採択される生物関係の論文の多くが、X 線解析をはじめとする生体物質構造解析の結果であることはご承知の通りであります。 すなわち、構造生物学は生命研究の主流となってきております。この趨勢から、本プロ ジェクトが果たすべき役割は決して小さくない筈です。大きなインパクトを発信できる よう、班員の方々のご奮闘と研究の発展を願って止みません。私のような微生物を扱っ ているものは結晶構造解析はできませんが、面白い研究材料を提供する立場にあります。 一方、結晶学者ご自身が研究材科を探すことは仲々大変であろうと推察致します。従っ て、分野の異なる研究者間の共同研究は益々重要となってきています。本プロジェクト から実りある共同研究が数多く生まれることも願っております。

偶然とは言えこのように重要なプロジェクトの代表にして戴いたことは、私:自身にとっ ても大変な幸運であったと考えております。自分達の研究を頑張ることが一番のご恩返 しであるという、坂部先生の大変有難いお言葉に甘えさせて戴いておりますが、それだ けではやはり心苦しく、プロジェクトのために少しでもお役に立ちたいと考えておりま す。皆様の率直なご意見、ご指示をお待ち致しております。以上、拙い文章で大変恐縮 ではありますが、代表引き継ぎのご挨拶に代えさせて戴きます。


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sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp