進化の課程においてヘモグロビンは共通の分子機構を発達させてきたが、その枠組 みの中で個々のヘモグロビンはそれぞれの必要性を満たすべく特徴的な進化を遂げ てきた。Bar-headedgooseは冬場はヒマラヤ山脈に棲息するために、そのへモグロビン は他のgooseに比べて、IPP(inositol pentaphosphate)存在下で酸素に対する親和性が10 倍ほど高く、この酸素親和性の上昇はαサブユニットのPro119がbar‐headedgooseで はAla残基に置換されたことに起因することが示唆されている。Bar-headedgooseのへ モグロビンの結晶構造解析の結果、humanへモグロビンと同様な高次構造をとってい るが、部分的にはサブユニット末端や表面の残基の構造に差異が認められた。特に Bar-headedgooseとhumanではanostericregulatorが異なるので、bar-headedgooseへモ グロビンのIPP結合部位付近のコンフォメーションはhumanとはかなり異なっていた。