構造生物 Vol.4 No.1
1998年3月発行

私と坂部先生の交流歴


大嶋建一

筑波大学物理工学系

私よ構造生物グループの会合には一度も参加したことはなく、皆様とはほと んど馴染みがなく、どうしてこの雑誌に記事を書くのか首を傾げる方がおられ ることでしょう。今回は公私ともに20年以上のお付き合いのある坂部先生と の交流の歴史と私達のグループの現状を述べてみます。

1)名古屋大学(1976年4月-1986年3月)
私は1976年4月より10年問名古屋大学工学部応用物理学科にお世話に になりました。所属していたのは原田仁平先生の研究室でして、主としてX線 回折法を用いた無機物の中に内在する構造揺らぎ・乱れの研究でした。それら に起因する散乱ば非常に弱く、強力なX線源を出現を待ち望んでいました。幸 い、名古屋大学に最大出力90kWの超強力X線発生装置が導入されることに なりました。その導入に関して、また維持・管埋について学内の関係者がしば しば会合をもち、そのころから坂部先生と知り合いになりました。研究領域ば 全く異なりますが、なぜか装置開発に関してば先生とば良く馬が合いました。 X線強度を増大するのは出カだけでなく、結晶分光器の改良も必要ということ で大量のLi Fを購入し、最初はてんぷら油を用い、さらにばシリコン油を用 いて結晶を湾曲させたことを記億しています。その後、坂部先生は高工研放射 光実験施設に転勤されました。私と原田先生は実験用の小物をリュックサック に積め、放射光を利用するためにしばしばつくばに通いました。その時には必 ず坂部先生御夫妻にお会いして、研究の話からさらにば世間話をしていました。

2)筑波大学(1986年4月-現在)
そうこうしているうちに、今度は私が1986年4月から筑波大学に移動す ることになり、坂部先生をびっくりさせました。当時、私は東北大学から高工 研に移られた岩崎博先生(現立命館大学勤務)と一緒にBL4Cに設置されて いる結晶分光型4軸回折計の維持・管理をしていましたので、頻繁に高工研に 行っていました。従って、必然的に坂部先生には良くお会いしました。しばら くして、先生のグループが画期的な発明であるイメージングプレートをいち早 く導入し、タンバク質の構造解析に取り組まれたのを羨ましく思いました。私 達も合金や低次元物質の構造揺らぎ・乱れに起因した2次元的な強度分布の測 定をしていましたのでその後IPでの検出方法を導入し、温度に依存した強度 変化の観察を行いました。その際には、先生のグループが開発した方法を利用 させて頂きました。

先生と私の宿舎は松代5丁目でして、よく整備されたお庭にクレマチス、バ ラ、菊、藤等の花をしばしば観賞に出かけました。いつもお若く見える先生に も60才定年がやってきました。以前から定年になったら愛知県にかえり、庭 いじりをするのだと聞いていましたから本当にそうするのだろうか?と多少興 味をもってながめていました。そうしましたら、筑波大学のTARAに移るか らと聞かされ、今度ば私がびっくりした次第です。なんとまー不思議な縁があ るのでしょう。筑波大学内では建物が異なりますのでお会いすることは殆どあ りませんでしたが、先生が装置を購人する際に開かれる機種選定委員会に出席 し、お会いしました。先生には僅かばかりのお役に立てたと思っています。し ばらくして、TARAの建物が出来、強力X線発生装置にIP読取装置のつい た迅速回折装置DlP−2000が納入され、その維持・管理をお願いされま した。私達もその装置を利用して仕事をと思っていましたので、無機物の試料 を付け回析図形の撮影を試みました。しかし、無機物は比較的重い元素が含ま れるので、透過法ではどうしても撮影が困難であることが判り、現在は使用し ていません。その代わり、装置使用者のマシンタイム配分、マックサイエンス との修理の窓口をしています。

最後に、現在私がどんな仕事をし、また研究室の構成はどうなっているのか については毎年物理工学系から3、4年生向けに発行されている案内(199 7年1月現在)及び昨年2月に日刊工業新聞に掲載された研究室紹介がありま すのでそれらを添付します。参考にしていただければ幸いです。(平成10年1月10日記)


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