構造生物 Vol.4 No.2
1998年8月発行

研究室紹介


岬真太郎

塩野義製薬株式会社中央研究所

当研究室は物理化学グループ内のl研究室で、蛋白質X線構造解析に基づく創薬を 目的とする研究は2名の専任スタッフにより行われています(2名のうち1名(小川政 義)が遺伝子操作から結晶化までを主に担当し、残りの1名である私が結晶化から構造 解析までを主に担当しています)。近年多くの製薬関連企業で蛋白質に関係した Structure-Based Drug Designのために、蛋白質立体構造の研究が遺伝子操作・培養精 製をも含めた形でいわゆる蛋白質研究グループとして整備されている状況と比べると 外見上は甚だ見劣りしますが、これは当研究所の創薬に関する蛋白質立体構造の重要 性あるいは実用性の認識の欠如を示すものではなく、当研究所における蛋白質立体構 造に関する研究体系が単に発展途上にあることを示しています。発展途上にあるとは 言っても蛋白質X線構造解析そのものは物理化学グループのグループリーダーの理解 と強力な支援を受け確実に進められており、阻害剤合成グループにも結晶化に参加し てもらい、立体構造に関してはNMRグループとも協調的に研究を行い、また、解 析結果に基づく議論等はCADDグループとも盛んに行っています。当然、蛋白質に 直接関わっている生物系のグループ等との連携も図りテーマの拡張にも努めています。 確かに、蛋白質の立体構造の有用性は科学の世界では広く一般に認められています。 が、その構造を得るために費やされる時間と労カと費用という観点から見ると非常に 厳しい面を持っています。特に、製薬関連企業においては研究対象となる蛋白質が指 定され、その蛋白質との相互作用を知りたい阻害剤等も限定されます。さらに、構造 を得るまでの時間的制約を強く受けるため、立体構造を得る事の困難さがますます増 大されています。社内でも立体構造を得るまでの道のりの長さがしばしば批判を受け る事が有ります。しかし、目的の立体構造は、真に「虎穴の奥深くで、すやすやと眠 る虎子」であり、責重なものはたやすく手に入れる事は出来ないというのもまた紛れ も無い事実です。我々2名のスタッフは、このジレンマに耐えながら、ともかく立体 構造に関してひとつでも多くの成果をより迅速に得る事が出来る様、「一人で二人分以 上の働きをする」をモットーに努力しています(ちなみに、研究室内の解析装置くR− Ax i s l V>も休む間もなく稼動しています)。

最後になりましたが、坂部先生を始めTARAプロジェクトを整えてくださいまし た関係各位、及び、TARAプロジェクトヘの参加を支持してくださいました社内の 方々に心より感謝致します。また、TARAプロジェクトに参加しておられる皆様に は今後とも色々とアドバイスして頂けます様宜しくお願い致します。


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