構造生物 Vol.4 No.2
1998年8月発行

自己紹介


米納 靖雄

長岡技術科学大学大学院工学研究科修士課程生物工学専攻

氏名:米納 靖雄(よのう やすお)
所属:長岡技術科学大学大学院工学研究科修士課程生物工学専攻
学年:M1
連絡先:〒940・21新潟県長岡市上富岡町1603・l生物系三井研究室
Tel 0258-47-1611(内線4535)
e-mail yonou@stn.nagaokaut.ac.jp

自己紹介内容:

不溶性の多糖を加水分解する酵素には、活性部位の存在する活性ド メインとは別に基質と特異的に結合する基質吸着ドメインを持った 酵素が多数存在します。

私は、Bacillus circulans WL-12株由来キチナーゼDをテーマとして、 不溶性多糖を加水分解する酵素に見られる基質吸着ドメインとその 加水分解機構の研究を進めています。

不溶性の多糖の一つにW-アセチルグルコサミンがβ-1,4結合したホモポ リマー、キチンがあります。Bacillus circulansWL-12株由来キチナーセ Dは、キチンを加水分解するキチナーゼの一種です。キチナーゼは、Bacillus circulans WL-12株以外にも動物由来、植物由来、細菌由来のものが多数発 見されています。糖加水分解酵素をアミノ酸配列の相同性により分類をした とき、Bacillus circulans WL-12株由来キチナーゼDは、細菌由来のキチナ ーゼに分類されます。キチナーゼDは、キチン吸着ドメインを持っており、 キチンを非還元末端より二糖単位で加水分解します。キチナーゼDは、アミ ノ酸残基数497、分子量52,620Daの蛋白質です。また、キチナーゼDは、 N末端側にキチン吸着ドメイン、C末端側に活性ドメイン、活性ドメインと 吸着ドメインの間に1つのフイブロネクチンタイプV様ドメインがあります。 フイブロネクチンタイプV様ドメインの働きについては、フイブロネクチン タイプV様ドメインを欠損させた変異体では不溶性基質に対する活性が落ち ることから、酵素の活性に対して何らかの働きを持っていることが報告され ています。キチナーゼD以外の細菌由来のキチナーゼについても様々な研究 が現在まで行われていて、数種類のキチナーゼについて立体構造が明らかに されています。それらは共通して活性ドメインにα1βバレル構造をとってい ることから、キチナーゼDの活性ドメインも類似した構造をとるのではない かと考えています。しかし、キチナーゼのキチン加水分解機構について、 いまだ不明瞭な点が多いのが現実です。

そこで、私は、Bacillus circulans WL-12株由来キチナーゼDのX線結晶 構造解析により分子レベルでのキチナーゼの反応機構と構造との相関、フィ ブロネクチンタイプ皿様ドメインの作用機構、それぞれのドメインの相互作 用について何らかの知見が得られることを期待しています。

現在、ハンギングドロップ蒸気拡散平衡法を用いてキチナーゼDの結晶化 条件の最適化を行い、沈殿剤に0.9Mリン酸水素二ナトリウム、0.01M TrislHCl酸緩衝溶液(pH7.0〜9.1)を用い7カ月で0.2×0.2×0.2m m3の結晶 を得ました。また、結晶学的パラメーターの決定を行い、空間群P212121、格 子定数a=54.2Å、b=77.2Å、c=182Åであることを明らかにしました。スタ ンダードバッファーの探索を行い、0.01M Tris/HCl酸緩衝溶液(pH8.5)、 0.9Mリン酸水素二ナトリウムの組成のスタンダードバッファーを得ました。 今後は、重原子置換結晶の作成、動的光散乱の手法を用いた結晶化条件の探 索を行っていく予定です。

私の所属する三井研究室は、X線回折装置、コンピュータ環境ともに研究室 レベルではかなり充実している研究室だと思います。また、今までの実績も ある研究室なので、私も卒業までになんとしてでも構造を明らかにしたいと 思っています。

なお、今回の内容は、平成9年度日本結晶学会にて発表しました。

プロフィール
平成7年3月八代工業高等専門学校生物工学科卒業
平成9年3月長岡技術科学大学生物機能工学課程卒業
平成11年3月長岡技術科学大学大学院生物機能工学専攻卒業見込み


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sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp