構造生物 Vol.5 No.1
¶1999年4月発行

平成10年度後期TARA坂部研究プロジェクトの活動


運営委員会委員長

坂部知平

I. TARA用第l実験ステーションBL6B

1. 利用状況

平成10年度後期のビームタイムは平成11年1月29日(金)から開始され2月25日(木)に終了した(表1)。中期と同様後期も Camera‐maintenanceの名目で予備日を設け、1週間前迄に急を要する要求がなければキャンセルを行った。国内大学関係者による登録は 3グループ(36時間)で、これは既に各自の持ち時問がなくなったために予約出来なくなった為と思われる。しかしこれまでの使用時間がリ セットされているにも拘わらず、平成11年度前期のビームタイムの予約は表2に示したように、4月4日現在で企業(カテゴリー c )は既に 38シフト(1シフトは12時間)に対し大学(カテゴリー d )は3シフトにすぎない。このことを考慮すると必ずしも予約できなくなった為と は言えないことになる。従って、ビームタイム予約規準に関する事は、例えば前期のビームタイムが終了した時点で判断したい。遅くとも、 BL6Cをオープンする段階までには原案を作成し、運営委員会に諮る予定である。

表1.平成10年度後期BL6Bビームタイム使用状況


USER NAME _a:administer _c:industry _d:non-industry -:free
A:50% area for long works, B:50% area for short works
    day: am:9:00-pm:9:00 night: pm:9:00-am:9:00(the next day)
1月29日 FRI A - (day) - (night)
1月30日 SAT A BERI_c (day) BERI_c (night)
1月31日 SUN A Nippon_Roche_c (day) Mizuno_Hiroshi_d (night)
2月1日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
2月2日 TUE A Fujisawa_Pharm._c (day) - (night)
2月3日 WED A Lin_Sheng-Xiang_b (day) Lin_Sheng-Xiang_b (night)
2月4日 THU A Eisai_Co._Ltd_c (day) setting_test (night)
2月5日 FRI B Yamanouchi_Pharm._c (day) - (night)
2月6日 SAT B Shionogi_Pharm._c (day) Shionogi_Pharm._c (night)
2月7日 SUN B Mitsubishi_Chem._c (day) Mitsubishi_Chem._c (night)
2月8日 MON B machine_study (day) machine_study (night)
2月9日 TUE B - (day) Mitsui_Yukio_d (night)
2月10日 WED B Yamanouchi_Pharm._c (day) Nippon_Roche_c (night)
2月11日 THU B JT_c (day) JT_c (night)
2月12日 FRI A Se_Won_Suh_b (day) - (night)
2月13日 SAT A Se_Won_Suh_b (day) Se_Won_Suh_b (night)
2月14日 SUN A Se_Won_Suh_b (day) - (night)
2月15日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
2月16日 TUE A - (day) - (night)
2月17日 WED A - (day) - (night)
2月18日 THU A - (day) Ajinomoto_Co._Inc_c (night)
2月19日 FRI B - (day) - (night)
2月20日 SAT B Daiichi_Pharm._c (day) Konno_Michiko_d (night)
2月21日 SUN B Mitsubishi_Chem._c (day) Mitsubishi_Chem._c (night)
2月22日 MON B - (day) - (night)
2月23日 TUE B Banyu_Pharm._c (day) Nippon_Roche_c (night)
2月24日 WED B Shionogi_Pharm._c (day) - (night)
2月25日 THU B Fujisawa_Pharm._c (day) - (night)

表2.平成11年度前期BL6B予約状況


USER NAME _a:administer _c:industry _d:non-industry -:free
A:50% area for long works, B:50% area for short works
    day: am:9:00-pm:9:00 night: pm:9:00-am:9:00(the next day)
4月15日 THU A beam_maintenance (day) beam_maintenance (night)
4月16日 FRI A beam_maintenance (day) beam_maintenance (night)
4月17日 SAT A Mitsubishi_Chem._c (day) overseas_users_a (night)
4月18日 SUN A Fujisawa_Pharm._c (day) overseas_users_a (night)
4月19日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
4月20日 TUE A Daiichi_Pharm._c (day) Nippon_Roche_c (night)
4月21日 WED A Eisai_Co._Ltd_c (day) Shionogi_Pharm._c (night)
4月22日 THU A Ajinomoto_Co._Inc._c (day) Yamanouchi_Pharm._c (night)
4月23日 FRI B - (day) - (night)
4月24日 SAT B BERI_c (day) BERI_c (night)
4月25日 SUN B - (day) - (night)
4月26日 MON B Banyu_Pharm._c (day) - (night)
4月27日 TUE B Eisai_Co._Ltd_c (day) - (night)
4月28日 WED A NO_beam (day) NO_beam (night)
4月29日 THU A NO_beam (day) NO_beam (night)
4月30日 FRI A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月1日 SAT A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月2日 SUN A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月3日 MON A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月4日 TUE A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月5日 WED A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月6日 THU A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月7日 FRI A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月8日 SAT A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月9日 SUN A NO_beam (day) NO_beam (night)
5月10日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
5月11日 TUE A machine_study (day) machine_study (night)
5月12日 WED A machine_study (day) machine_study (night)
5月13日 THU A beam_maintenance (day) beam_maintenance (night)
5月14日 FRI A beam_maintenance (day) beam_maintenance (night)
5月15日 SAT A beam_maintenance (day) beam_maintenance (night)
5月16日 SUN A beam_maintenance (day) beam_maintenance (night)
5月17日 MON A 3Gev (day) 3GeV (night)
5月18日 TUE A 3Gev (day) 3GeV (night)
5月19日 WED A 3Gev (day) 3GeV (night)
5月20日 THU A 3Gev (day) 3GeV (night)
5月21日 FRI B Daiichi_Pharm._c (day) - (night)
5月22日 SAT B Mitsubishi_Chem._c (day) Matsumoto_Osamu_d (night)
5月23日 SUN B Yamanouchi_Pharm._c (day) - (night)
5月24日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
5月25日 TUE A Eisai_Co._Ltd_c (day) - (night)
5月26日 WED A Banyu_Pharm._c (day) - (night)
5月27日 THU A Ajinomoto_Co._Inc._c (day) - (night)
5月28日 FRI A Camera_maintenance (day) Camera_maintenance (night)
5月29日 SAT A - (day) - (night)
5月30日 SUN A - (day) - (night)
5月31日 MON B machine_study (day) machine_study (night)
6月1日 TUE B Fujisawa_Pharm._c (day) Shwu-Huey_Liaw_b (night)
6月2日 WED B Mitsubishi_Chem._c (day) Shwu-Huey_Liaw_b (night)
6月3日 THU B Yamanouchi_Pharm._c (day) Sankyo_Co._Ltd_c (night)
6月4日 FRI B Camera_maintenance (day) Camera_maintenance (night)
6月5日 SAT B - (day) - (night)
6月6日 SUN B - (day) - (night)
6月7日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
6月8日 TUE A Kirin_Brewery_c (day) Kirin_Brewery_c (night)
6月9日 WED A BERI_c (day) BERI_c (night)
6月10日 THU A Nippon_Roche_c (day) Nonaka_Takamasa_d (night)
6月11日 FRI A Camera_maintenance (day) Camera_maintenance (night)
6月12日 SAT A Konno_Michiko_d (day) - (night)
6月13日 SUN A - (day) - (night)
6月14日 MON B machine_study (day) machine_study (night)
6月15日 TUE B Kirin_Brewery_c (day) Kirin_Brewery_c (night)
6月16日 WED B Mitsubishi_Chem._c (day) - (night)
6月17日 THU B Ajinomoto_Co._Inc._c (day) - (night)
6月18日 FRI B Camera_maintenance (day) Camera_maintenance (night)
6月19日 SAT B - (day) - (night)
6月20日 SUN B - (day) - (night)
6月21日 MON A machine_study (day) machine_study (night)
6月22日 TUE A Banyu_Pharm._c (day) Sankyo_Co._Ltd_c (night)
6月23日 WED A Eisai_Co._Ltd_c (day) - (night)
6月24日 THU A Daiichi_Pharm._c (day) Yamanouchi_Pharm._c (night)
6月25日 FRI A Camera_maintenance (day) Camera_maintenance (night)
6月26日 SAT A Nippon_Roche_c (day) - (night)
6月27日 SUN A - (day) - (night)
6月28日 MON A Fujisawa_Pharm._c (day) - (night)

2.ビームラインアシスタント

今期はビームラインアシスタントの希望者がなかったので、PFスタッフ及び中丸幸雄氏等が頑張ってくれた。諸氏に感謝する。

3.装置の状況

今期は短期間の利用であったが、幾つかの問題点が発見された。
1)光軸とオメガ回転軸との交差に約 100μm ほどの狂いが発見された。ビームタイム中は応急処置により利用に支障は起こさなかったが、 ω 軸に狂いが生じた可能性が有るため、ビームタイム終了後直ちに、理学電機鰍ノゴニオベースを送りω軸のチェックを依頼した。工場か らの報告によるとの ω 軸を分解して主軸、前後軸( Z 軸)共に振れは 8μm 程度、組 立後に測定した結果では振れ 30μm 以下との事である。従ってこのまま4月9日に復旧作業をしてもらうことになった。原因は未解決であ るが、経時変化などにより軸が光軸からずれたのであれば、コリメーターの高さを調節することで解決するのかも知れない。何れにしても次 回ビームタイムまでに実用上問題にならないようにする。

2)今期のマシンタイムの立ち上げ時点で、ビーム強度がこれまでの約半分ほどに低下していた。検討の結果、モノクロメータ通過後のビーム の形状がそれまでの形状と異なっていることが分かった。原因は目下検討中であるが、モノクロ結晶を銅製の台座に固定する際オイルの表面 張力を利用しているため、経時変化により接着状況が変ってきている可能性が大きい。ビームタイム中には根本的な対策は行えないためとり あえず、第ニスリットでビームの形状が良好になる条件に調整した結果、ビーム強度はほぼ回復した。しかしその結果モノクロ結晶の回転セ ンターとビームのセンターにずれを生じ、波長の変更を行うとビームがコリメータを通らなくなる。そのようなわけで、今期は波長を1.0A に固定した。暫く検討を行い、5月の連休にモノクロ結晶の接着し直しと調整を行う予定である。それまでは波長変更は不可能に近いと思わ れる。大変ご迷惑を掛け、申し訳ありません。

3)本来IPカセットは最後部まで下げる前に垂直状態からずれると、カセットの下部がヘリウムチェンバーに当たる恐れがあるため、垂直状 態からずれないようロックがかかるようになっていた。しかし此のロック機構が甘く成っていたので、改良を行った。

U.TARA第2実験ステーションBL6C

日本学術振興会未来開拓推進事業の産学連携研究費で開発中の全自動データ収集システムのメカニズム部分が完成した。装置は図1に示すよ うに極めて大きいため、BL6C八ッチによほど巧く搬入しないとセットできない。即ち各部の相対的な位置関係は芽搬入の際誤差数ミリで設 置しなければならない。前もってハッチの床に描かれていた放射光のパス(床面に垂直に投影した線)を規準に取り、工場から送られてきた、 モノクロメータの回転軸位置を原点としビーム方向をX、それに垂直方向をYとした座標値を頼りに、床面に設置する場所を1mmの精度で 書き入れた。特にカメラ部については設計図に描かれた台座をコピー機で実寸大にしたものをハッチの床に貼り付けた(写真1)。

本装置は精密機械であり且つ重量物であるため運搬には細心の注意を払い、可能な限り分解し現地組立とした。3台のトラックに積まれ3月 22目加賀工場を出発して翌23日早朝PFに到着した。カメラ部は更にモノクロメーターチェンバー、台座、ゴニオメータ一部、へリウム チェンバー等に分解された。特にカメラの台座部は重量がありショツクに弱いので、読取部、消去部、ベース部、搬送部等と共に精密機器運 搬車で運ばれてきた(写真2)。5トン用フォークリフトを積んだトラックとベニヤ板等の小道具を運んできた小型トラックまで入れると計5 台のトラックが中央搬入口付近を埋め尽くした。

参考までに各部の重量を記載しておく。

  • カメラ部------------------4,020Kg
  • 搬送台車部---------------1,205Kg
  • 消去前搬送部--------------350Kg
  • 読取、消去、べース部-------2,790Kg
  • IPカセット部(2個)------------940Kg
  • 総重量-------------------9,305Kg

    最初にトラックから搬出したのはカメラの台座であった。先ずカメラの台座を精密機器 運搬車から5トン用フォークリフトですくい上げ(写真3)それをPF光源棟の中央搬入 口まで運んだ(写真4)。そこでビシャモンに移し替え、通路に敷かれた厚さ 2cm もあ るベニヤ板の上を数人掛かりで運んだ(写真5)。

    しかしハッチ内は狭く組み立てし難いため、一旦ハッチの外に置き、2日掛けて組み立て、その後ハッチ内に設置する事になった。最初にハ ッチ内に設置されたのはIP読取、消去、べース部(これで一体)である(写真6)。次に消去前搬送部が設置された。23日の時点でBL6Cに仮 設置されたのはこれだけである(写真7)。分かり難いと思うが、写真7の奥に円筒状のものが16本並んで見えている。これが消去用ナトリ ウムランプのケースである。又その手前が読取部で斜め下を向いて5本並んで見えるのが読み取りへッドである。その両方を乗せているがっ ちりした台座が読取消去用べースである。そのべースの中間に消去用ナトリウムランプの安定器(電源)が16個装備されており、その内の4 個が白く見えている。消去部の右に写っている台状の物品が消去前搬送部で上面に多数並んで見えるのはボールベアリングでこの上を重量 470Kg のIPカセットがスムーズに移動する仕組みである。此の面の中央の溝にIPカセットを移動させるためのロボットアーム、磁気セ ンサーや光センサー、ショック防止装置などが取り付けてある。

    カメラ部を設置した後でないと搬送台車部は設置できないため搬送台座部もハッチの外におかれた(写真8)。写真8手前左に見えるのが搬送 台車部、右がカメラ台車部である。此の写真のほぼ中央にIPカセット部が2台写っている。ここまでの作業は午前中に終了し、午後からカ メラ部の組立作業が開始された。カメラ台座はモノクロメーターを中心に動く 2θ 可動部その上に光軸合わせ用の様々な駆動部から構成さ れている。輸送に当たってはボールベアリングが接触している場所を保護するため、その間に多くの詰め物がなされていた。そこで先ずそれ を外す作業から始められた(写真9)。精度のいる作業であること、及び此の段階ではモーターを回転させて高さを調整すること等も出来ない。 そこで全て手作業で行う必要があるため初日の作業は此の段階でストップした。

    翌24日はゴニオメータ部の取り付け作業から始まった(写真10)。写真11は運搬の際 ω軸やゴニオメーターに狂いが生じているといけ ないので一旦解体し、組立直しているところである。これは最も精度の要求される作業であり組立師の腕の見せ所である。その後、IPカセ ットの中心とω軸との一致の度合いがチェックされた。写真12はチェックのためIPカセットをカメラ部に乗せているところである。テス トはマックサイエンス副社長の片山忠二氏の立ち会いのもとに行われた。心配そうについ手を出してしまったワイシヤツ姿の片山氏が写って いる。結果は上々、同軸からのずれはIP感光剤の厚み以下であった。一斉に笑顔がみなぎった。最後にモノクロメータチェンバー部が取り 付けられこの日の作業を終了した(写真13)。

    25日はカメラ部の設置作業から開始された。組み上がったカメラ部は巨大で重量も4トンを越すためビシャモン2台を用い9人掛かりでハ ッチ内に運んだ(写真14)。この際、写真1で示した台座の位置とモノクロメーター回転中心を示す針が床近くに延びており、これらを数ミ リ以内の誤差で放射光の光軸に合わせる作業がおこなわれた。その後、モノクロメーターチェンバーを外し、光軸合わせ用治具を立て、トラ ンシット(経緯儀)とオートレベルを使用し1ミリ以内にモノクロメーターの回転中心を合わせた。最後に搬送台車部を設置した。これはビシ ャモン1台で十分であるが、狭い場所に正確に入れる必要があり、予想どおり大変な作業であった。写真15は各部台座の水平を出す作業を しているところである。写真16はノートパソコンを使い搬送部を駆動し調整を行っているところである。ハッチが十分大きく、ビームの高 さが十分あれば三角形に突っ張った足を持つ台座を3点で支えることが出来るので調整は極簡単であるが、可動範囲ぎりぎりの台座でしかも ビームの高さの関係で薄い台座にしなければハッチ内に収まらない。その結果7カ所で支えることになった。7カ所の調節は大変である。未 だこれから細かい調整が続くが、モノクロメータチェンバーとIPカセットを除く本装置の機械部分をハッチ内に納めた全体像を大扉(正面) から撮影したものを写真17に示した。又IPカセット1台を乗せて下流側から撮ったものを写真18に示した。

    3月30日には筑波大学による納入検査(写真19)が行われ、4月1日には富士写真フイルム梶E品質保証部の安全検査が行われた(写真20, 21)。安全検査は既に工場で行われ、幾つかの改善箇所が指摘されており、今回は実行状態を検査に来られた。この日ワークステーション を繋ぐテストも行われた(写真22)。4月2日にはカメラ台の調整がほぼ完了し、最大の重量物であるカメラ本体が2θ方向に最大限移動し た場合でもモノクロメータ中心の水平方向の振れを 20μm に押さえることが出来た。写真23はダイヤルゲージで上記の変動を見ていると ころである。又4月3日にはIPカセットの出し入れによるカメラ部の上下の変動は 50μm 以下に調整できた。これらの数値はカメラ部が リノリューム張りの床と馴染むに従い減少するものと思われる。更にこの目にはIPカセットをカメラ部から搬送部に往復させることが出来 た。これまで、IPカセットの乗っている方がその重力で下がり、その為搬送部の搬送台の高さを調整する必要があった。しかし、4月3日 ついにその調整をしなくても往復出来る状態になった。此の喜びは居合わせた人でないと味わえない! 平成11年度に行う低温装置、自動 軸立て用平面IPカセット及びそのホールダーなどの設計製作予定について話し合った(写真24)。

    これからパソコンからの制御テスト、読取シーケンスのテスト及び感度調製に約1月を予定している。詳細に付いては平成11年度中に「学 振未来開拓」欄に掲載する。毎月加賀工場に行きチェックを行い、製作過程で仕様の変更も行ってきた。しかし実際使用してみると通常多く の改良点が見付かるものである。平成11年度一杯試運転を行い、改良を加える。平成11年度は制御部及び低温吹き付け装置の開発を行う。 平面IPカセットとR&Dで開発したIP読取装置を改良したものによる。自動軸立て機構の導入も考えている(センタリングはマニュアル)。

    今後この全自動データ収集システムの保守管理を全面的に宮本康弘氏に委託する。此の業務が円滑に行われるよう、宮本康弘氏は平成10年 7月20日〜8月8日及び10月8日〜11月24日の期間マックサイエンス加賀工場で研修を行った。その後、更に腕を磨くため、平成1 0年11月30日〜平成11年1月21目及び2月1日〜3月22日の期間加賀工場に出張させ装置の組立、配線、等の実地作業を行わせた。 その間、保守用マニュアルやオぺレーションマニュアル等も作り始めている。今後が期待される。

    V.コンピュータ関係

    1. ネットワークとデータサーバの利用状況

    11月15日データ量がサーバディスク容量の70%を越えたため(図2)保存期間を5日間に短縮した。17日にはデータ量が減少してきた ので7日に戻した。このように10月の初めから始まったビームタイムでは、データ量が急増しデータ保存期間を最も短いときでは3日問に 短縮した。このため1月始めのビームタイム休みの間にサーバのRAlDディスクを115GBから159GBに増設した。この結果、1月末 からのビームタイムでは、データ量は最大でもディスク容量の50%を越えることがなく、安心して保存期間を7日間で運用することができ た。

    2. O2のトラブルについて

    TARAハウスの2台の02がデータをDATへバックアップ中にダウンした。立ち上げ直したが再度ダウンしたので業者にチェックを依頼し たが原因はつかめていない。現在はロジックボード及びメモリを交換し且つ02の1台をIRIX6.5にバージョンアップして運用し、様子 を見ている。

    3. その他

    Y2K問題についてのOSの対応は、DECは4.0d、SGIはIRIX6.5以上にする必要があるため夏のビームが止まっている間に対処するこ とを予定にしている。

    前号でBL6Bに移設したDEC433au、INDIGO2(R10000)、INDIGO2(R4400)の転送速度が非常に遅いとの苦情がユーザから寄せられ応急 処置としてINDIGO2(R10000)をBL18B側のネットワークに繋ぎ替え、さらにDEC433auは元のホスト名(tarade4)に戻したと報告した。 この件についての原因解明はまだされていないが、DEC433auのホスト名の変更によりスイッチングHUBの接続の混乱による結果と推定 しており、この応急処置により転送速度も元に戻り以後問題は起こっていない。

    W. TARAプレハブハウス

    2階の根幹ブレーカーが作動し停電した。幸いコンピューターは故障しなかったが、2階のコンピューターには無停電電源が装備されていな いため、コンピューターにとって停電は極めて危険である。

    使用電力のチェックを行ったがブレーカーが作動するほどの電力は使用していなかった。工事を行った業者に原因調査を依頼した結果、放射 光の運転状況を表示する為のビデオコンバーターに僅かではあるが漏電が観測された。安全のため、端末ブレーカーを高感度漏電ブレーカー に切り替え、幹線ブレーカーが落ちる前に小型ブレーカーが落ちるよう改造する。また、主幹に漏電警報機を備え付け安全性を高める。

    その他、現在210、211、212の3室のコンセントが 20A の共通ブレーカーである。特に210室(宮本康弘氏の研究室)には共用 性の大きいワークステーションが設置されているので、210室用に20Aの配線依頼を行う。これらの工事は4月9日を予定している。

    V. 各種委員会報告

    1. 編集委員会

    第11回編集委員会が平成11年3月2日(火)18時よりTARAハウスにて開催された。出席者は、石川弘紀、栗原宏之、坂部貴和子、坂部 知平、曽我部智、田仲可昌の6名、その他オブザーバーとして参加して頂いた三浦圭子の計7名であった。

    構造生物Vol.5,No.1の原稿の最終チェックならび印刷等のスケジュール確認が行われた。続いて次号(Vol.5,No.2)の内容について検討 が行われ、執筆依頼者及び各委員の役割分担が決定された。特集として「Structural Genomics」について、大阪大学・倉光先生に執筆して 頂くことが決定した。また、DENZOの開発者マイナー博士が5月に来日するのに合わせ、DENZOに関するQ&A特集を行う方針を決定し た。なお、基礎セミナ一としては、「蛋白質の精製に関連してPharmiacla社のAKTAの紹介」、及び、「ドラッグデザイン」を取り上げるこ とにした。また、海外研究室紹介としてウプサラ大の岩田先生に、会社紹介として持田製薬と吉富製薬に、それぞれ執筆して頂くこととした。

    2.行事委員会

    平成11年2月10目(水)、拡大行事委員会を東京・二子玉川にて開催した。出席者は杉浦、杉尾(以上三菱化学)、伊藤、畠(以上三共)の4名。 8月ごろシトクロムP450関連のセミナーの開催をする事を決定した。

    VI. 業績紹介

    TARAプロジェクトとして行った研究であることが明確である論文のみを掲載する。尚、本プロジェクトのメンバー名と所属を各論文の文頭 に掲げた。

    1.祥雲弘文(筑波大)

    Denitrification by yeasts and occurrence of cytochrome P450nor in Trichosporon cutanenum FEMS Microbiology Letters 168, 105-110 (1998)

    2. 池水信二(Oxford)

    CD2 and the nature of protein interactions mediating cell-cell recognition

    3. 畑 安雄(京大)

    L‐2-ハロ酸脱ハロゲン化酵素の立体構造と反応機構の解析
    Crystallographyc Analysis of the Tertiary Structure and Reaction Mechanism of L-2-Haloacid Dehalogenase
    日本結晶学会誌 39,358-365(1997)

    4. 畑安雄(京大)

    Crystal Structures of Reaction Intermediates of L-2-Haloacid Dehalogenase and Implications for the Reaction Mechanism
    Journal of Biological Chemistry 273, 24, 15035-15044 (1998)

    5. 畑 安雄(京大)

    X-Ray Structure of a Reaction Intermediate of L-2-Haloacid Dehalogenase with L-2-Chloropropionamide
    J. Biochem. 124, 20-22 (1998)

    6. 三木 邦夫(京大)

    An archetypical extradiol-cleaving catecholic dioxygenase: the crystal structure of catechol 2,3-dioxygenase (metapyrocatechase) from Pseudomonas putida mt-2 Structure 7, 7125-7134 (1999)

    7. 三木 邦夫(京大)

    Crystallization and preliminary X-ray diffraction study of lactonohydrolase from Fusarium oxysporum
    Acta Cryst. D54, 1432-1434 (1998)

    8. 三木 邦夫(京大)

    A novel approach to crystallizing proteins with temperature-induction method: GrpE protein from Thermus thermophilus
    Journal of Crystal Growth 186, 456-460 (1998)

    9. 三木 邦夫(京大)

    Crystallization and preliminary X-ray diffraction studies of a replication initiator protein (RepE54) of the mini-F plasmid complexed with iteron DNA
    J.Biochem., 125, 24-26 (1999)


    ご意見、ご要望などは下記のアドレスにメールを下さい。
    sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp