構造生物 Vol.5 No.1
1999年4月発行

研究室紹介


松宮茂樹

協和醗酵工業株式会社医薬総合研究所

協和発酵工業医薬総合研究所は、静岡県の東部、三島と沼津の中間にあります。西に富士、東に箱根、南に伊豆の景勝に恵まれた地にあって、探索、開発製剤の3研究所体制で、次代の医薬品の創製を目指した研究を行っています。協和発酵の創立は1949年、医薬研究所(1998年より医薬総合研究所に組織変更が設立されたのは1969年ですから、今年1999年は会社創立50周年、医薬研究所立30周年の節目の年となります。

当社の分子設計研究グループは、医薬総合研究所探索研究み所に所属しており、構造解析グループ及び計算化学グループから構成されています。坂部プロジェクトには、3名が客員研究員として参加させていただいております。

X線構造解析では、これまでは主に低分子リード化合物及び原薬の結晶構造解析に専念してきましたが、ここ数年の構造生物学及びstructure-based drug designへの要求の高まりを受けて、現在、タンパク質結晶解析の体制作りが人員、設備の両面から進められています。残念ながらまだ本誌上で成果を紹介することはできませんが、タンパクの大量発現、精製も含めて、創薬のターゲットとなるような基質一受容体複合体の構造解析を行うべく、関連部署との密接な協力関係の下で実験を進めています。

また、計算化学関連では、メディシナルケミストと共に、分子モデリングに基づくリード化合物の探索や、コンビナトリアルケミストリー及びハイスループットスクリーニングにも対応したインフォマティックス研究を行っています。分子ドッキングを行う際の受容体タンパクの構造データをPDB等に頼っているのが現状ですが、できるだけ近い将来に、我々自身の手で決定したタンパクの三次元構造を用いて活性分子の設計を行うことを予定しており、構造解析−分子設計−合成の一貫した創薬研究体制を確立することを目指しています。

企業ユーザーにとって、必要に応じてシンクロトロン放射光施設を利用できる環境を実現した坂部プロジェクトの意義は計り知れないものがあります。このすばらしい研究環境を築き、そして利用の機会を我々に提供して下さっているプロジェクトメンバーの皆様にこの紙面を借りて感謝いたします。


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sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp