構造生物 Vol.5 No.2
¶1999年9月発行
このような高吸着容量担体のメリットは精製物の濃縮・処理時間の短縮・バッファー使用量の低減・更なるスケールアップの可能性・精製装置の小型化があげられます。
ここでポイントとなるのは
・@分離特性
・A回収率
・B操作性
です。
作業は最小限に抑え、効率よく純度を高めていくためには分離のモードを変えることが効果的です。
例えばCaptureのステップでイオン交換を用いた場合、目的タンパク質は塩溶出されます。
そこでアフィニティークロマトグラフィーや疎水性クロマトグラフィーなどの高イオン強度で吸着する手法を選択すると分離モードを変えると同時にサンプルの前処理にも手間がかからず効率的に純度を上げていくことができます。
その例を表・2に示します。
ここでポイントとなるのは
・分離特性
です。
最近では分離能・再現性からみて非常に高性能で、なおかつ操作時間の点でも以前に比べ短縮できるようになったカラムが販売されています。目的タンパク質のサイズにより分画範囲の異なる担体を使い分けます。
最近このようなタンパク質精製のストラテジーを迅速に実行していくための機能を兼ね備え高度に自動化したシステムが販売されています。
この後、この最新のタンパク質精製システムを利用した精製工程開発の一例をご紹介いたします。
この研究はMatthew Lloyd博士、Christopher Schofield博士(Oxford Centre for Molecular Sclences, United Kingdom)およびInger Andorsson教授(Department of Molocular Biology-Swedish University of Agricultural Scicnces, Uppsala)の協カによって行われ ました。また、EU grant BIO4-CT96-0126(DG12-SSMI) "Four-dimensional X-ray crystallography of penicillin and cephalosporin biosynthctic enzymes : Towards new antibiotics"にサポートされました。
References
1.Morgan,N. et al.(1994) Bioorg. Med. Chem. 4, 1595-1600.
2.Roach, P. L. et al.(1997) Structure of isopenicillin N synthase complexed with substrate and the mechanism of penicillin formation. Nature 387, 827-830.
ゲルろ過カラムによる方法
塩酸グアニジン(GdmCl)や尿素のような可溶化剤存在下でのゲルろ過が可溶化したインクルージョンボディ中に含まれた不純物や部分的に形成された複合体画分を除くのに効果的であるとする報告がいくつかあります。
WeirとSparks(1)は大腸菌にて発現させたインターロイキン2のインクルージョンボディを10mMのDTTを含む8MGdmCl(pH8.5)で可溶化した後、可溶化液と同様の組成のバッファーで平衡化したSuperose 12 HR 10/30カラム(アマシャムファルマシアバイオテクK.K.)を用いゲルろ過を行いました。単量体インターロイキン2の画分のみを分取し、希釈によりリフォールディングを行っています。
同様な手法は、Gillらによる組換えウシ成長ホルモンの精製(2)、MarcianiらによるHlV工ンベローププロテインの精製(3)、Foutoulakisらによる可溶性ヒトインターフェロンγレセブターの精製(4)において報告があります。
さらに最近、ゲルろ過カラムで分画のみならずリフォールディングまでも行ったという報告がなされています。Wernerら(5)は、1分子中にシステインを9残基含む6-8M GdmCl(pH8.5)にて可溶化したあと可溶化剤を含まないHEPESバッファー(pH6.8)にて平衡化したSuperdex75HR10/30カラム(アマシャムファルマシアバイオテクK.K.)で展開しています。その結果、活性型の組換えETS-1を71±15%の収率で得ることに成功しています。
イオン交換/疎水性相互作用クロマトグラフィー担体を用いる方法
イオン交換あるいは疎水性相互作用クロマトグラフィー担体にインクルージョンボディを不溶性のまま吸着させ、塩で溶出させることにより、可溶性とリフォールディングを同時に行ってしまう例が報告されています。Hoessら(6)は3種類の組換えタンパク質のインクルージョンボディを不溶性のまま、Q Sepharose FastFlow(アマシャムファルマシアバイオテクK.K.)に吸着させ、NaClを加えて溶出させることにより活性型のタンパク質を回収しています。
また同時に彼らはS Sepharose FastFlowやPhenyl Sepharose(アマシャムファルマシアバイオテクK.K.)を用いたリフォールディングについても言及していますが、この場合には吸着は必要ないと述べています。
(1). Weir,M.P and Sparks,J.,Biochem. J., 245,85-91(1987).
(2). Gill, J. A. et al., Bio/Technology, 3, 643-646(1985).
(3). Marciani, D. J., et al., In:Protein purification:Micro to Macro, Alan R. Liss,inc.,443-458(1987).
(4). Fountoulakis, M. H. et al., J.Biol.Chem., 265,13268-13275(1990)
(5). Werner, M. H. et al., FEBS Letters, 345, 125-130(1994)
(6). Hoess, A., et.al., Bio/Technology, 6,1214-217(1988)