構造生物 Vol.5 No.2
¶1999年9月発行

持田製薬株式会社 バイオ創薬グループの紹介


松末朋和

持田製薬株式会社総合研究所バイオサイエンス研究室・バイオ創薬

持田製薬総合研究所バイオサイエンス研究室は、東京都北区神谷に所在しています。近くには、八代将軍吉宗によって桜が植えられ、現在でも都内における桜の名所として知られている飛鳥山公園があります。バイオサイエンス研究室では、天然の生理活性物質の抽出、スクリーニングを中心に、微生物工学・蛋白工学・細胞学・構造生物学を活用した研究を実施しています。

私が所属するバイオ創薬部門では、薬物標的である生体高分子の立体構造情報に基づいたドラッグデザイン(Structure Based Drug Design)を中心に実施しています。バイオ創薬の「バイオ」には、生体高分子に関する実験情報や構造情報・バイオインフォーマティクス解析から得られた情報を、現場担当者にフィードバックしていくという意味が込められて いると考えています。実際、業務担当者も、理論・生化学に長けた研究配属されています。

装置面は、計算・分子設計用にUNlXグラフィックスワークステーション(SGI社製)、並列計算用ワークステーション、構造解析には、X線回折装置としてリガクRAXlS‐IVを導入しています。

これまで、Fas Ligand(当研究室と大阪バイオサイエンス研究所と共同でクローニング)関連の研究や、当社蛋白製剤の組み換え改変体などに関して、バイオ創薬部門の研究成果を外部発表しています。また、薬物標的蛋白質の立体構造を活用したバーチャルスクリーニングによるシード探索を検討しており、これに関しても結果が得られつつあります。我々は、現在の研究結果を、医薬品という形で結実させることを目標とし、そのために熟考された実験を心がけ、最適と考えられる作業仮説のもと、計算を走らせる日々を続けているわけです。実験だけでも、計算科学を用いた理論(コンピュータ)だけでも、効率よい研究を遂行することはできないというのが私の信念ですが、当社においては、比較的恵まれた環境で研究業務に携われていると感じています。

現在、TARAには、客員研究員としての立場を頂いておりますが、放射光利用に関しては、まだまだ、未熟ですので、今後とも皆様の御指導を仰ぎながら、研究業務に活用できるように、努力したく思っております。

よろしくお願いいたします。


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sasaki@tara.met.nagoya-u.ac.jp